くらしの税金

確定申告の方法の選び方【2026年版】無料の作成コーナー・クラウド会計・税理士、どれを選ぶか

確定申告の「やり方」は、この数年で大きく変わった。かつてスマホ申告は給与+医療費控除ぐらいしか使えなかったが、いまや事業所得・不動産所得を含む所得税の全画面がスマホ対応になり、国税庁の無料手段だけで完結できる人が一気に増えている。だからこそ「どの方法を選ぶか」の判断が、コストと手間を大きく左右する。会社員から個人事業主まで、自分に合う方法を選ぶための地図を、中立の立場で整理する。

確定申告の「方法」は大きく3つ

確定申告をどう進めるかは、突き詰めると次の3ルートに分かれる。それぞれ得意な領域とコストが違う。

1. 国税庁の無料手段(確定申告書等作成コーナー/e-Tax/スマホ申告)

国税庁が提供する無料のオンラインツール。ブラウザで「確定申告書等作成コーナー」にアクセスし、画面の案内に沿って金額を入力すれば、所得税・消費税・贈与税の申告書や青色申告決算書・収支内訳書を作成し、そのまま e-Tax で送信できる。費用はゼロだ。

かつてスマホ申告は「給与1枚+医療費控除・寄附金控除のみ」といった極端に狭い範囲しか対応していなかったが、令和6年分(2025年に申告するもの)から所得税のすべての画面がスマホでも操作しやすい画面に刷新され、青色申告決算書・収支内訳書もスマホで作成できるようになった。つまり事業所得・不動産所得のある人も、原則スマホ+マイナンバーカードだけで申告を完結できる。2026年に行う令和7年分の申告では、iPhoneのマイナンバーカード(スマホ用電子証明書)にも対応する。

2. クラウド会計ソフト(freee会計/マネーフォワード クラウド確定申告/やよいの青色申告オンライン 等)

日々の帳簿づけから決算・申告までを一つのソフトで回す民間サービス。銀行口座やクレジットカードと連携して取引を自動で取り込み、複式簿記の帳簿を作りながら青色申告決算書まで組み立てられる。主に事業所得・不動産所得のある個人事業主やフリーランス向けで、料金はプランにより異なる(後述)。

3. 税理士に依頼する

申告書の作成・提出を専門家に外注する方法。費用はかかるが、判断の難しい論点や税務調査リスク、節税の設計まで含めて任せられる。事業規模が大きい、取引が複雑、法人化を検討している、といった局面で選ばれる。

重要なのは、この3つは排他的ではないことだ。普段はクラウド会計で記帳し、迷った年だけ税理士に依頼する、といった組み合わせも現実的な選択肢になる。

確定申告方法の選び方フロー図。事業所得・不動産所得があれば青色申告でクラウド会計、控除の追加だけならスマホ申告・作成コーナー(無料)、複雑なら税理士に相談

あなたに向くのはどれか

判断の分かれ目は、大きく「会社員か、事業をしているか」にある。

会社員(年末調整済み+控除の追加だけ)

給与を1か所からもらい年末調整が済んでいて、確定申告の目的が控除の追加――医療費控除、ふるさと納税(ワンストップ特例を使わない場合)、住宅ローン控除の初年度、といったケースなら、国税庁の無料手段(スマホ申告/作成コーナー)で十分だ。わざわざ有料のソフトを使う理由はほとんどない。

とくにマイナンバーカードを使ったマイナポータル連携を設定すると、給与の源泉徴収票・医療費・ふるさと納税などのデータを一括で取得して申告書へ自動入力できる。手入力の手間と転記ミスが減るため、会社員の還付申告はこの方法が最も速い。ふるさと納税の控除の仕組みそのものは「ふるさと納税の仕組みと限度額」で整理している。

副業・投資などの所得が加わる会社員

給与に加えて副業の雑所得や、上場株式・暗号資産などの所得がある場合も、所得の種類自体は作成コーナー/スマホ申告が対応している。金額の入力箇所さえ分かれば無料手段で完結できることが多い。ただし副業が事業所得と言える規模まで育ち、帳簿づけが必要になってきたら、次のクラウド会計ソフトを検討する段階に入る。

個人事業主・フリーランス(事業所得・不動産所得+青色申告)

事業所得や不動産所得があり、青色申告特別控除(65万円)を狙うなら、日々の記帳が前提になる。ここで効いてくるのがクラウド会計ソフトだ。銀行・カード連携で取引を自動取得し、複式簿記の帳簿を維持しながら決算書まで組み立ててくれるため、記帳作業そのものを大幅に軽くできる。

なお65万円控除の要件は、複式簿記・貸借対照表の添付・期限内申告に加えて、e-Taxによる電子申告優良な電子帳簿での保存のいずれかを満たすことだ。これを満たさないと控除額は55万円にとどまる(国税庁)。つまり「クラウド会計で帳簿を作り、e-Taxで送る」流れは、この要件をそのまま満たす。もっとも、作成コーナーでも青色申告決算書を作って e-Tax 送信できるので、取引が少なければ無料手段でも65万円控除は取れる。分岐点は「帳簿づけの負担を自動化したいか」だ。

主要クラウド会計ソフトの位置づけ

個人向けの主要ソフトは、freee会計・マネーフォワード クラウド確定申告・やよいの青色申告オンライン(弥生)の3つが広く使われている。いずれも個人事業・青色申告を主なターゲットにしているが、思想が少しずつ違う。中立の立場で特徴を整理する。

freee会計は、簿記の知識が薄くても使える設計に振り切っているのが特徴とされる。取引を「収入か支出か」といった質問形式で分類していく作りで、会計に不慣れな開業初期の個人事業主に選ばれやすい。

マネーフォワード クラウド確定申告は、銀行・カード・証券など連携できる金融サービスの幅広さと、家計簿サービスからの連続性が語られることが多い。会計の考え方にある程度なじみがあり、明細の自動取得を軸に運用したい層と相性がよいとされる。

やよいの青色申告オンライン(弥生)は、パッケージ会計ソフトで長年のシェアを持つ弥生のクラウド版で、初年度無料などの料金施策を打ち出してきた歴史がある。従来型の帳簿画面に近い操作感を好む層に支持されやすい。

料金はいずれもプランや契約時期のキャンペーンで頻繁に変わるため、本稿では具体的な月額・年額を断定しない。各社の公式サイトで最新の料金と、無料お試し期間の有無を必ず確認してほしい。どれも一定期間の無料トライアルを用意していることが多いので、実際に自分の取引データを入れて操作感を比べるのが失敗の少ない選び方だ。

なお、AIによる記帳自動化や申告書作成の自動化は、この数年で急速に進んでいる。その最前線と限界については「AIが申告書を書く日」で扱った。

税理士の視点――ソフトで足りる範囲と、専門家に頼むべき局面

税理士として率直に言えば、「無料の作成コーナー/スマホ申告で足りる人」の範囲は、この数年で確実に広がった。会社員の還付申告や、取引がシンプルな小規模の事業なら、無料手段で正確に申告を終えられる。ここに有料ソフトや税理士報酬を投じる必要は薄い。まずは無料手段で足りるかを起点に考えるのが合理的だ。

一方で、ソフトや無料手段が肩代わりしてくれるのは「入力と計算」であって「判断」ではない、という点は強調しておきたい。次のような局面では、専門家に相談する価値が高い。

  • 経費になるか微妙な支出の線引き(自宅兼事務所の家事按分、車両、交際費など)
  • 事業所得か雑所得か、といった所得区分の判断
  • 消費税の課税事業者・インボイス登録の要否や、簡易課税の選択
  • 不動産の譲渡、相続・贈与がからむ年、開業初年度の特例適用
  • 売上規模が拡大し、法人化の損益分岐が見えてきた局面

これらは金額入力の前段にある「制度の当てはめ」であり、ソフトが自動で最適解を出してくれる領域ではない。ツールは判断を代替しない。むしろクラウド会計で日々の帳簿を整えておき、判断が必要な論点だけをスポットで税理士に相談する、という役割分担が、コストと安心のバランスとしては現実的だ。

もう一点、注意を促したい。クラウド会計ソフトの料金は毎年のように改定され、キャンペーン内容も変わる。「初年度無料」「最安」といった触れ込みは契約時点の条件にすぎないため、翌年以降の通常料金まで含めて判断してほしい。本稿で特定のソフトを推奨しないのも、各人の取引構造とコストで最適解が変わるからだ。

アクション

  • まず自分の申告目的を確認する。控除の追加だけなら、国税庁の無料手段(スマホ申告/作成コーナー)を第一候補にする
  • マイナンバーカードを用意し、マイナポータル連携を設定する。源泉徴収票・医療費・ふるさと納税データの自動入力で手間とミスが減る
  • 事業所得・不動産所得があり日々の記帳負担が重いなら、クラウド会計ソフトの無料トライアルで freee・マネフォ・弥生の操作感を比較する
  • 65万円の青色申告特別控除を狙うなら、複式簿記・期限内申告に加え、e-Taxでの電子申告(または優良な電子帳簿保存)を満たす段取りにする
  • 料金は必ず各社公式で最新を確認する。「初年度無料」等は翌年以降の通常料金まで見て判断する
  • 経費の線引き・所得区分・インボイス・法人化など「判断」がからむ論点は、無理に自己判断せず税理士に相談する

出典

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