くらしの税金

年収1,000万円の税金はいくら?2025年改正後の手取りを税理士が概算シミュレーション

「給料の半分は税金でもっていかれる」——高所得サラリーマンの口からよく出るこの言葉は、正確に計算するとほとんどの場合に当てはまりません。しかも2025年(令和7年)の税制改正で、基礎控除・給与所得控除・いわゆる「年収の壁」が一斉に動き、税負担の前提が変わりました。

この記事では、改正後の現行制度にもとづいて、高所得の目安である年収1,000万円の税金を、前提を明示した概算でシミュレーションします。あわせて、高所得層特有の「控除が消えていく」構造も税理士の視点で読み解きます。

年収1,000万円にかかる税金の全体像

まず押さえておきたいのは、税額を決めるのは「年収」そのものではないという点です。所得税・住民税は、次の順序で計算されます。

  1. 給与収入(=年収)から給与所得控除を引いて「給与所得」を出す
  2. 給与所得から所得控除(基礎控除・社会保険料控除・扶養控除など)を引いて「課税所得」を出す
  3. 課税所得に超過累進税率を掛けて所得税を、原則10%を掛けて住民税を計算する

年収1,000万円という数字がそのまま高い税率のレンジに当たるわけではありません。ここから2段階の控除を引いた「課税所得」に税率がかかるため、実際に適用される税率は見た目よりずっと低くなります。所得税の最高税率は45%、住民税は原則10%で合計55%ですが、これは課税所得4,000万円超という、ごく一部の超高所得層にしか当てはまりません。

2025年の税制改正で何が変わったか(基礎控除・給与所得控除・年収の壁)

2025年(令和7年)の税制改正は、物価上昇への対応として所得税の基礎的な控除を引き上げるものでした。年収1,000万円の計算にも直接効くので、改正点を正確に整理します。

所得税の控除と年収の壁の変遷タイムライン。2024年まで103万円の壁、2025年改正で給与所得控除・基礎控除が引き上げられ課税最低限160万円へ、基礎控除の上乗せは2026年分までの時限措置で2027年分から58万円に

給与所得控除:最低保障額が55万円→65万円に

給与所得控除は、給与収入から自動で引かれる「サラリーマンの経費」にあたる控除です。改正では最低保障額が55万円から65万円へ引き上げられました。

ただし、これが効くのは給与収入が低い層です。給与所得控除には上限195万円があり、給与収入850万円超ではこの上限に張り付きます。年収1,000万円は上限に到達しているため、給与所得控除は195万円のまま。最低保障額の引き上げは、年収1,000万円層には影響しません。

基礎控除:所得に応じて最大95万円、ただし高所得では逓減・消失

基礎控除は、すべての納税者に認められる控除です。改正で恒久部分が48万円から58万円に引き上げられ、さらに2025年分・2026年分(令和7・8年分)に限った時限的な上乗せが加わりました。合計所得金額に応じて段階的に決まり、次のようになります。

  • 合計所得132万円以下:95万円(58万円+上乗せ37万円)
  • 132万円超〜336万円以下:88万円
  • 336万円超〜489万円以下:68万円
  • 489万円超〜655万円以下:63万円
  • 655万円超〜2,350万円以下:58万円(上乗せなし)

時限的な上乗せは令和8年分までで、令和9年分以後は原則58万円に戻ります。年収1,000万円のサラリーマンは合計所得金額が655万円を超えるため、上乗せは受けられず、基礎控除は58万円です。

さらに高所得側では基礎控除が消えていきます。合計所得金額が2,350万円を超えると48万円→32万円→16万円と段階的に逓減し、2,500万円超で0円になります。この点は後述します。

年収の壁:所得税の課税最低限は「103万円→160万円」へ

給与所得控除(最低65万円)と基礎控除(最大95万円)の引き上げにより、所得税がかかり始めるライン(課税最低限)は、従来の「103万円」から160万円に上がりました。長年おなじみだった「103万円の壁」は「160万円の壁」に置き換わったと考えてよいでしょう。あわせて、大学生年代(19〜22歳)の子を扶養する親向けに特定親族特別控除が新設され、子の給与収入150万円までは親が満額(63万円相当)の控除を受けられるようになりました。

年収の壁の全体像(社会保険の壁との違いや2026年分の見込みを含む)は、別記事で整理しています。

あわせて読みたい年収の壁2026まとめ——103万円→160万円、そして178万円へ2026年7月25日

年収1,000万円の税額シミュレーション(前提を明記した概算)

ここからは実際に計算します。あくまで概算であり、次の前提を置いています。

  • 令和7年分(2025年分)の現行制度で計算
  • 40歳未満・独身・扶養親族なしの会社員(控除が最も少なく、税負担が最も重くなる保守的なケース
  • 社会保険料は協会けんぽ(東京)・厚生年金の標準報酬上限などを考慮した概算約130万円(勤務先・年齢・賞与の配分で変動します)
  • 住宅ローン控除・iDeCo・ふるさと納税などの適用なし

ステップ1:給与所得 給与収入1,000万円 − 給与所得控除195万円(上限)= 給与所得805万円

ステップ2:課税所得(所得税) 給与所得805万円 − 社会保険料控除130万円 − 基礎控除58万円 = 課税所得617万円

ステップ3:所得税 課税所得617万円は「330万円超695万円以下」のレンジで税率20%・控除額42.75万円。 617万円 × 20% − 42.75万円 = 約80.6万円。これに復興特別所得税2.1%を加えて所得税は約80万円

ステップ4:住民税 住民税の基礎控除は43万円とやや小さく、課税所得は約632万円。所得割10%と均等割を加えて住民税は約64万円

合計 所得税約80万円 + 住民税約64万円 = 税金の合計は約144万円。年収に対する税負担率は約14%です。

年収1,000万円という「高所得」でも、税金だけなら手取りの14%程度。「半分」には遠く及びません。これは超過累進税率(低いレンジには低い税率が適用される仕組み)と各種控除が効いているためです。扶養家族がいたり、住宅ローン控除やiDeCoを使えば、負担率はさらに下がります。

「半分」と感じる正体は社会保険料

では、なぜ「税金が高い」と感じるのか。大きな要因は社会保険料です。健康保険・厚生年金・雇用保険からなる社会保険料は、厳密には税金ではありませんが、給与から天引きされる点は同じです。

年収1,000万円の場合、社会保険料(本人負担)は概算で約130万円。これを税金と合わせると約274万円、負担率にして約27%になります。手取りは概算で約726万円です。

負担率3割弱——確かに軽くはありませんが、「半分」ではありません。「給料の半分」が現実味を帯びるのは、社会保険料を含めても課税所得数千万円クラスの超高所得層に限られます。

税理士の視点(高所得層の負担構造・控除逓減・手取りの考え方)

年収1,000万円層を見るとき、税理士として押さえておきたい論点が3つあります。

1. 給与所得控除は「頭打ち」で伸びない。 年収850万円を超えると給与所得控除は195万円で固定されます。つまり、850万円超の増収は、控除で目減りせずほぼ全額が給与所得に乗り、そこに20〜23%以上の税率がかかります。年収が上がるほど限界税率(次の1万円にかかる税率)が体感的に重くなる——これが「稼いでも税金で持っていかれる」という実感の一因です。ただし平均負担率は上記のとおり14%程度で、限界税率と平均税率を混同しないことが重要です。

2. 高所得側では控除そのものが消えていく。 基礎控除は合計所得2,350万円超で逓減し、2,500万円超でゼロになります。かつては年収1,220万円あたりから始まる給与所得控除の頭打ちに加え、基礎控除の消失、さらに配偶者控除も本人の所得が高いと消えます。高所得層は「税率が高い」だけでなく「控除を段階的に取り上げられる」二重の構造にあり、実効負担は名目税率以上に重くなります。年収1,000万円はまだこの逓減ゾーンの手前ですが、昇給や副業で所得が伸びる局面では意識しておきたい境界です。

3. 「額面」ではなく「手取りと限界税率」で考える。 年収1,000万円の手取りは概算で約726万円。ここから住宅ローン控除・iDeCo・ふるさと納税・企業型DCなどをどう組むかで、実際の手取りは十万円単位で変わります。特に限界税率が20〜23%(住民税と合わせ30〜33%)の層は、所得控除型の節税策(iDeCo・小規模企業共済など)の効き目が大きい帯です。額面の大きさに一喜一憂するより、限界税率をどう下げるかで考えるのが実務的です。

なお、本記事の数字はすべて概算です。社会保険料は勤務先・年齢・賞与の配分で数十万円単位で変わり、それが所得税・住民税にも波及します。個別の税額は、扶養状況や他の所得を含めて計算する必要があります。

実務家・読者のアクション

  • 自分の課税最低限を更新する。 「103万円の壁」は所得税では160万円に動いた。扶養や配偶者の働き方を前提から見直す
  • 限界税率を把握する。 年収1,000万円層の限界税率は所得税20〜23%+住民税10%。iDeCo・ふるさと納税などの効き目はこの税率で決まる
  • 2,350万円・2,500万円の逓減ラインを意識する。 昇給・副業・株式報酬で合計所得が伸びる人は、基礎控除の逓減・消失で実効負担が跳ねる境界を把握しておく
  • 時限措置の期限に注意する。 基礎控除の上乗せ(最大95万円)は令和8年分まで。令和9年分以後は原則58万円に戻る前提で見込みを立てる
  • 年収の壁の詳細は関連記事で確認する。 社会保険の壁(106万円・130万円)は税制と別の仕組みで動いていない点に注意

出典(国税庁・財務省)

あわせて読みたい年収の壁2026まとめ——103万円→160万円、そして178万円へ2026年7月25日

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